お客様から寄せられたご質問
貸主はいつでも契約を解約できますか?
南青山法律事務所からのご回答・ご提案
貸主の場合は必ずしも一方的に契約を終了させることはできません。
<解説>
物件を賃貸に出したものの、
○ 自分がそこに引っ越したい。
○ 子供をそこに住まわせたい。
○ 更地にして売却したい。
というように、その後状況が変わり、物件を借主から返してもらいたい事情が生じることもありますよね。
この場合、果たして貸主は賃貸借契約を途中で解約し、物件を借主から返還してもらえるのでしょうか。
今回はこのテーマについて考えてみたいと思います。
1. 期間内解約の定め
この点、実は、賃貸借契約においては、期間の定めというのは基本的に絶対です。
なぜなら、契約期間というのは、当事者双方にとって重要なポイントだからです。
貸主にとってみれば、たとえば2年間借りてくれると思っていたのに、途中で出て行かれてしまうと困りますよね。
借主にとってもみても、たとえば2年間物件を借りられると思っていたのに、途中で貸主の都合で追い出されてしまうのでは困ります。
したがって、本来的には、契約期間の途中に、借主または貸主の一方的な意思で契約を終了させることはできません。どうしても契約期間の途中に契約を終了させたければ、相手方の同意が必要である、ということになるわけです。
とすると、確かに相手方が了承してくれさえすれば、貸主も借主も、期間途中で契約を終了させることは可能です。
とはいえ、いつもいつも相手方の同意・了承が必要だとすると、相手方が同意してくれない場合に大変不都合ですよね。
たとえば、急な転勤でどうしても引越しなければならないにもかかわらず、空室を恐れる大家さんが契約終了に合意してくれない場合、借主は契約期間満了までずっと家賃を支払わなければならなくなります。
そこで、通常、賃貸借契約書においては、
【期間内解約の定め】というものが設けられています。
これは要するにどういうことかというと、「何ヶ月か前に告知すれば、契約期間内であっても契約を終了させることができる」という内容の定めです。
(具体例)
第1項
甲または乙は、相手方に対し、1ヶ月以上の予告期間をもって、本契約の解約を書面により申し入れることができる。
第2項
前項の規定にかかわらず、乙は、解約申し入れの日から30日分の賃料(本契約解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申し入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。
たとえば、この条文でいえば、
1ヶ月前に告知するか または 家賃1ヶ月分を支払う
ことにより契約を終了できる、ということになります。
この条文はほとんどの契約書に盛り込まれているので、みなさん常識のように思われていると思いますが、この期間内解約の定めがあるからこそ、一定期間の猶予(または一定期間分の賃料の支払い)を設けることで、ある程度自由に契約を終了させることができるようになっている、というわけなんですね。
2. 貸主は「期間内解約の定め」を活用できるか
そうすると、少なくとも【借主】は、契約書に定められたルールさえ守れば、契約期間内であっても契約を一方的に終了させることができる、ということになります。
では、ここから今回の本題ですが、借主と同じように、契約書に定められたルールさえ守れば、【貸主】も賃貸借契約を一方的に終了させることができるのでしょうか。
結論から先に申し上げますと貸主の場合は必ずしも一方的に契約を終了させることは【できない】ということになります。
契約書にきちんとそう書いてあるにもかからわず、どうしてこういう結論になるのでしょうか。
それは、借地借家法の存在があるからです。
借地借家法は、【期間の定めのある契約】について貸主側から契約を終了させるためには
1 期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶の通知を出すこと
2 借地借家法の定める正当事由があること
が必要だとしています。
また、同法は、【期間の定めのない契約】について貸主側から契約を終了させるためには
1 解約申し入れを行うこと
2 解約申し入れから6ヶ月が経過すること
3 借地借家法の定める正当事由があること
が必要だとしています。
そして、ここが大事なポイントなのですが、借地借家法はこれらの点に反する特約で借主に不利な特約は法律上無効だとしています。
とすると、今回のテーマである期間内解約の定めは、借地借家法に反する特約として無効になる可能性があるということなんです。
したがって、貸主の場合は必ずしも一方的に契約を終了させることはできないということになります。
なお、仮にこの期間内解約の定めが無効にならないケースがあったとしても、貸主が契約を解約する場合には、【借地借家法の定める正当事由】が必要とされることは間違いないといえます。
したがって、仮に期間内解約の定めが無効にならないケースであっても、たとえば2ヶ月前とか3ヶ月前とかいうように契約書に定められた期間を守って解約を申し入れたというだけでは、必ずしも貸主からの解約が認められるわけではありません。
借主が快く合意してくれれば別ですが(A)、そうでない限り、自己使用の必要性であったり、立ち退き料の提供であったり、といったいわゆる 【正当事由】 が必要になります(B)。
「じゃあ、契約書ってなんだんだ。」
「契約書にそう書いてあるのにどうしてダメなのか。」
「借主も契約時に合意しているじゃないか。」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。
確かにそうおっしゃるお気持ちはよくわかるのですが、
借地借家法という法律がある以上仕方がない、ということになります。
3. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案
したがって、仮に契約書に期間内解約の定めがあったとしても、
・貸主からは必ずしも一方的に契約を終了させることはできない
そう覚えておいてください。
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
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