お客様から寄せられたご質問
契約更新後も連帯保証人は責任を負うのでしょうか?
南青山法律事務所からのご回答・ご提案
原則として契約更新後も保証人は責任を負います。
<解説>
Q&A 『連帯保証人の責任とは?』 のところで、連帯保証人の責任についてご説明いたしました。
では、この連帯保証人の責任は、賃貸借契約が更新された後にも続くのでしょうか。
たとえば、
○ 契約更新の際には連帯保証人引受承諾書に署名捺印をもらわなかった。
○ 更新契約書の連帯保証人の欄に連帯保証人の署名捺印がない。
といった場合において、契約更新後に家賃滞納が発生した場合に、貸主は滞納家賃を連帯保証人に請求できるのでしょうか。
そこで今回は、【契約更新後も連帯保証人は責任を負うのか】ということについて検討してみたいと思います。
1. 更新契約書等にサインがある場合
この点、契約更新の際は、
○ 更新合意書
○ 更新契約書
○ 建物賃貸借契約書(更新)
といった更新書類が作られるのが一般的です。
この更新書類の【連帯保証人】の欄にその連帯保証人の方の署名・捺印がある場合は当然、契約が更新された後も連帯保証人は責任を負います。
また、これらの書類にサインがなくても、更新時に
○ 連帯保証人引受承諾書
に改めて署名捺印をもらっている場合は当然更新後も連帯保証人の責任は引き継がれます。
実務上はこういった更新書類が作成されるのがむしろ一般的だと思われますので、ほとんどの場合、「契約更新後も連帯保証人は責任を負う。」と理解されれば特に問題はないと思います。
2. 更新契約書等にサインがない場合
では、たとえば、
○ 契約更新の際には連帯保証人引受承諾書に署名捺印をもらわなかった。
○ 更新契約書の連帯保証人の欄に連帯保証人の署名捺印がない。
といった場合に、連帯保証人の責任は更新後も引き継がれるのでしょうか。
たとえば、
契約更新後に家賃滞納が発生した場合に、貸主は滞納家賃を連帯保証人に対して請求できるか。
というような場面で問題になります。
この点、結論からいうと、
更新の際に改めて署名捺印がなされていなくても、原則として連帯保証人の責任は契約更新後も引き継がれる。
ということになります(そのように判断した最高裁判例があります。)。
これはどうしてかというと、そもそも賃貸借契約は相当の長期間にわたって存続することが予定された継続的な契約ですよね。
そして、(Q&A 『貸主はいつでも契約を解約できますか?』 でもご説明したとおり)賃貸借契約は貸主の側からはそう簡単に解約できません。
とすると、賃借人が希望する限り契約は更新されるのが通常なわけです。
そして、このことは、保証人になる人にとっても
当然予想できることだといえます。
そうすると、「更新後も責任を負う」としても、
「保証人に不測の事態が発生する」ということにはなりません。
しかも、賃貸借契約における保証人の責任というのは、基本的には毎月の家賃の支払がベースとなっていて、予想できないほどの大きな責任が一挙に発生するということはあまりありません。
とすれば、
契約更新後は責任を負いません。
というようなことを契約書上保証人が明確にしているような場合であれば別ですが、そうでない限り、更新後も引き続き連帯保証人に責任を負わせたとしても特に不都合はないと考えられます。
したがって、
「契約更新後は責任を負いません。」と契約書に明記してあるような場合を除いて、契約更新後も連帯保証人は原則として引き続き責任を負う。
と考えられているというわけです。
3. 例外的に責任を免れることはあるか
このように、連帯保証人は、「契約更新後は責任を負いません。」と契約書に明記してあるような場合を除いて、契約更新後も原則して責任を負うことになります。
とはいえ、「契約更新後は責任を負いません。」と契約書に明記していなければどんな場合であっても必ず責任を負うのかというと、そうではありません。
たとえば、
1 すでに家賃滞納額が多額になっているにもかかわらず、
2 貸主は契約の解除もせずに放置し、
3 それによって滞納額がさらに積み増しされた
という場合に、(貸主のほうにかなりの問題があるということもあるのだと思いますが)結論として契約更新後の保証人の責任が否定されたというケースもあります。
4. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案
したがって、繰り返しになりますが、
「契約更新後は責任を負いません。」と契約書に明記してあるような場合を除いて、契約更新後も連帯保証人は原則として引き続き責任を負う。
ということになります。ただし、
○ 現在の実務運用どおり、更新の際には毎回連帯保証人から署名・捺印をもらうようにする。
○ 漫然と家賃滞納を放置するなど貸主の側に問題がある場合は連帯保証人の責任が否定されることもあるので、家賃滞納等のトラブルが発生した場合にはこまめに連帯保証人にも連絡を取る。
ということにぜひご留意ください。
特に、家賃滞納トラブルについてはかなり初期の段階で連帯保証人に連絡することがおすすめです。
そうでないと、ある程度滞納額が積み重なってから連帯保証人に連絡した場合、
「どうしてももっと早い段階で連絡してくれなかったのか。」
「ここまで大きな金額になると、こちらとしてももはや払えない。」
というクレームになり、連帯保証人からの協力が得られなくなってしまうことがよくあるからです。
Q&A 『入居審査の際の5つのチェックポイントとは?』でもご説明したとおり、連帯保証人はトラブル解決の際の有力な味方になりうる存在です。
したがって、問題が発生した場合にはこまめに連絡をして、問題意識を共有するようにしてください。
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
(その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。)
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【ご注意】
上記回答はあくまで一般的なケースについて述べるものですので、個別具体的なケースでの結論・成果をお約束するものではありません。
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