お客様から寄せられたご質問
家賃は時効にかかりますか?
南青山法律事務所からのご回答・ご提案
家賃請求権は5年で時効にかかります。
<解説>
当事務所に寄せられるご相談のなかで、比較的多いご相談が
もうずいぶん前から家賃を滞納されていて、なかなか完済してくれないのですが、家賃が時効にかからないか心配です。そこで、家賃が時効によって消滅してしまうか教えてください?
という家賃の時効に関するご相談です。
そこで、今回は家賃の時効に関して考えてみたいと思います。
1. 家賃は5年で時効によって消滅する
この点、家賃のように毎月定期的に発生するものについては、民法169条が適用され、5年で時効によって消滅します。
民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)
年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
普通一般的に債権の時効期間は10年とされていて、いわゆるビジネス上の債権の時効期間は5年とされていますが、不動産賃貸業における賃料債権の時効期間も同じく5年とされています。
そこで、
家賃は5年で時効によって消滅する。
ということをまずは頭に入れておいてください。
2. 家賃は古い順から充当する。
では、家賃を時効で消滅させないためにはどうすればいいでしょうか。
これにはまず、
①家賃は古い順から充当する
という方法が挙げられます。
これはどういうことかというと、たとえば2011年6月分の家賃が未払のまま、2011年7月12日に家賃が1ヶ月分入金されたとします。
この場合は、入金された家賃1ヶ月分を、2011年7月分としてではなく、2011年6月分として受領する、ということです。
≪例≫
2011年6月分の賃料が未払のまま、2011年7月12日家賃が1ヶ月分のみ入金された。
2011年7月分として受領する・・・×
2011年6月分として受領する・・・○
こうやって、最も古い家賃=最も時効になる可能性が高い家賃から順番に受け取っていくことで、家賃が時効によって消滅してしまうリスクを少なくすることができます。
3. 必要であれば裁判をする
とはいえ、この「古い順から充当していく」という方法は、「借主がまがりなりにも返済を続けている」ということが前提になりますので、借主が全く家賃を支払わない場合にはこの方法では対応できません。
また、仮に借主が家賃を支払い続けているとしても、そのペースが遅い場合には、いずれ(一番古い順から)家賃が時効にかかって消えていってしまう可能性があります。
そこで、そのような場合には、家賃を時効消滅させない方法として、
②必要であれば裁判をする
という方法があります。
これにより、家賃が時効によって消滅することを防ぐことができます。
(厳密には、時効の中断=時効の進行がリセットされます。)
(次は5年ではなく、裁判が確定してから10年間は時効によって消滅することがなくなります。)
4. 請求書を送り続けていれば時効は防げるか?
では、裁判まではせず、請求書を定期的に送り続けている場合、家賃が時効で消滅することを防げるでしょうか。
結論からいえば、この場合、時効消滅を防ぐことはできません。
なぜなら、単に請求書を送るだけの行為は、専門用語で「催告」といい、要するに6ヶ月の猶予を生むだけの意味しかないからです(催告後6ヶ月以内に裁判等の法的手続に着手しない限り、時効の進行は止まりません。)。
したがって、あくまで時効の進行を中断するためには、最終的に法的手続しかないということをご理解ください(請求書さえ定期的に送っておけばいいと勘違いされている方もいらっしゃいますが、決してそうではないのでくれぐれもご注意してください。)。
このほか、「滞納家賃が存在することを債務者が認めている」という場合も時効の進行が止まります。
したがって、これらの方法をいろいろと駆使しながら、家賃が時効で消滅することを防ぐ、ということになります。
5. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案
以上をまとめますと、
・家賃請求権は5年で時効にかかる。
・したがって、受け取った家賃を古い順から充当していったり、裁判を起こしたりすることで、家賃が時効によって消滅することを防ぐ必要がある。
ということになります。
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
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