法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

建物の一部を「間貸し」する際の注意点を教えて下さい。

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

「貸す場所」や「貸し方」に注意が必要です。
なぜなら、貸す場所や貸し方次第で借地借家法が適用され、立退料を支払わなければ退去させられなくなることがあるためです。

<解説>

  
1.貸し方次第で借地借家法が適用される

アパートやマンションのように
各区画が明確に区切られている建物を貸す場合と異なり、
一戸建ての建物の一部の部屋を貸したり、
スーパーマーケットの売り場の一部を貸したりするなど、
建物の一部を「間貸し」することがあります。

この場合、「あくまで建物の一部を使わせてあげている」という感覚からか、
貸し手は建物を賃貸しているという感覚がなく、
「こちらが出て行ってもらいたい時にいつでも出て行ってもらえる」
と気軽に考えてしまう傾向があるようです。

しかし、このように建物の一部を「間貸し」する場合でも、
「貸す場所」や「貸し方」次第で借地借家法が適用されることがあるため、
注意が必要です。


2.借地借家法が適用されるとどうなるのか

万が一借地借家法が適用されることになると、
「そう簡単に退去を求めることができない」ようになります。

期間の定めのない契約であれば、
解約を希望する日の6ヶ月前に解約を申し入れる必要があり、
しかもその解約申入れには【正当事由】が必要となります。
(借地借家法27条・28条)

期間の定めがある契約の場合は、
期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に契約更新を拒絶する旨通知しなければならず、
しかも、その更新拒絶通知には【正当事由】が必要になります。
(借地借家法26条・28条)

そして、みなさんご存知のように、
正当事由があると判断されるためには、
自己使用の必要性等だけでなく、立退料の支払いも多くの場合必要になります。


このように、

借地借家法が適用されてしまうと、理由なく立ち退きを求めることができない。
場合によっては立退料の提供が必要となる。

ということで、退去を求めることが著しく困難になってしまうのです。

まずはこの点をしっかりと意識していただく必要があります。


3.どういう場合に借地借家法は適用されるのか

では、どういう場合に借地借家法は適用されるのか。

過去の裁判例からすると、

①「構造」と「使用」について独立していて
② 排他的な利用が認められる場合に

借地借家法が適用される可能性が高いと考えられます。

たとえば、過去の裁判例(東京地判平成3年7月26日)では、
以下の点を検討し、それぞれ独立性が認められるとして、
借地借家法の適用が認められました。


【構造】
・施錠可能な板戸で他の部分と区切られている。
・二階の他の部屋ともそれぞれ施錠可能な板戸で区切られ、他人の居室に入らずに自室に出入りできる。
・便所を除き住居として生活できる構造になっている。
・その便所についても共用ではあるが一階廊下に面しており他人の居室に入ることなく使用できる。
   
【利用】
・本件部屋は当該借主のみが使用する専用部分であり、家主といえども勝手に立ち入ることはできない扱いとされている。

このように、構造上独立した区画を専用使用的に貸し出す場合、
借地借家法が適用される可能性が高くなります。


4.南青山法律事務所からのご提案

以上から、
「こちらが出て行ってもらいたい時にいつでも出て行ってもらいたい」というように、
気軽に貸したいということであれば、

・構造上独立した区画を貸してはいけない。
・特定の区画を専用使用的(家主が自由に出入りできないような形)に貸してはいけない。

ということになります。

 
 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
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