法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

借主が盗難にあった場合、貸主に責任はありますか。

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

同等物件と同程度の防犯設備が整っている物件であれば、特別な事情がある場合を除いて、貸主が責任を問われる可能性は低いと考えます。

<解説>

  
1. 貸主はどこまで責任を負うのか

借主が盗難にあった場合に貸主は責任を負うか、という問題は、
「貸主は、防犯に関し、どのような内容の義務を負っているか」
という問題と密接に関係しています。

というのも、

A 貸主は単に物件を貸す義務を負っているだけであり、
安全面までは保証する義務までは負っていない。

と考えるのであれば、「盗難の責任を貸主は負わない」という結論になりますし、
逆に

B 貸主は安全な物件を貸す義務を負っている。

と考えるのであれば、
「盗難の責任を貸主は負う」という結論になるからです。


この問題については未だ議論が固まっていない状況にある
と理解していますが、仮に上記

B 貸主は安全な物件を貸す義務を負っている。

という考え方を採るとしても、
ありとあらゆる物件で最高の防犯設備を整えなければいけない、
というのでは行き過ぎですし、賃料とのバランスもあります。


家賃1万円の物件であっても最高の防犯設備を整えよ、
という意見に与する方は少ないと思います。

※※
また、そもそも借主は契約を締結する際、
賃貸物件の鍵の状況その他防犯体制について認識して
契約を締結しているはずです。
契約時の状態で保存管理しているのであれば、
貸主としてなすべきことをなしているともいえます。
※※


そこで、仮に

B 貸主は安全な物件を貸す義務を負っている。

という考え方を採るとしても、

どの程度まで貸主は防犯設備を整備しなければならないのか

という点は契約ごとに変わってくると考えています。


たとえば、

○ 特に防犯設備の充実を謳っているわけでもない。
○ 防犯に関する特約もない。
○ 新規入居に際して鍵の交換をしている。
○ 家賃も相場並である。

という場合は、
マーケットにおける同等物件と同程度の防犯設備を整えていれば、
万が一盗難が物件内で発生したとしても、
盗難に関して貸主が責任を問われる可能性は低いと考えます。
(ただし、借主入退去に伴い、居室の鍵を新しいものに交換することは最低限必要と考えます。)

一般的な賃貸借契約書においては、

地震、火災、風水害等の災害、盗難等その他不可抗力と認められる事故、または、貸主の責によらない電気、ガス、給排水等の設備の故障によって生じた借主の損害について、貸主はその責を負わないものとする。

というように、盗難は貸主の責任ではないことを明記しているケースも多く、
こういった条項があれば、よりいっそう貸主の責任を否定する方向に働きます。


2. 貸主が責任を負う場合はあるのか

先ほど述べたとおり、

○ 特に防犯設備の充実を謳っているわけでもない。
○ 防犯に関する特約もない。
○ 新規入居に際して鍵の交換をしている。
○ 家賃も相場並である。

というような、いわゆる普通の物件であれば、
他の物件と同程度の一般的な防犯設備を整えている限り、
借主の盗難被害について貸主が責任を負う可能性は低い、と考えています。


これに対し、たとえば

○ 防犯設備が充実していることを宣伝文句にして入居者を募集していた。
○ 貸主が防犯設備を充実させることが特約として明記されている。
○ 借主が防犯性を強く求め、貸主もそれに合意して契約した経緯がある。
○ 一般的な物件と比較して防犯設備を充実させることが合理的な家賃設定である。
○ 鍵が故障したとの連絡が借主からあったにも関わらず、放置していた。
○ 同種の鍵が設置されている物件で盗難事件が多発しているとの報告が警察等から寄せられていた。
○ 前借主の利用していた鍵を交換せず、現借主の承諾がないのにそのまま利用していたところ、前借主が合鍵を使って盗難に及んだ。

というような【特別な事情】がある場合は、同等物件と同程度の防犯設備を整えていたとしても、借主の盗難被害について貸主が責任を問われることはあると考えます。


3. 南青山法律事務所からのご提案

以上から、借主が盗難にあった場合に備えて、以下の点に留意しておかれることをお勧めいたします。

● 同等物件と同程度の防犯設備は整えておく。
(ただし、借主入退去に伴い、居室の鍵を新しいものに交換しておくことは必須。)
● 契約書に盗難に関する免責事項を設けておくとともに、既存設備以上の防犯は借主の責任で行うことを明記する。
● 鍵が故障した場合には速やかに交換をする。近隣で盗難等が相次いでいる、と警察から報告があった場合も放置せず、慎重に対応する。
 
 
 
 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
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