法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

貸主から賃貸借契約を終了させる方法とは?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

まず、【借主の合意】を得る方法があります。
次に、借主の合意が得られない場合は、A)契約期間の定めがある賃貸借契約の場合は【更新拒絶通知】、B)契約期間の定めがない賃貸借契約の場合は【解約の申入れ】を借主に対して行うことです。ただし、更新拒絶通知と解約の申し入れにはいずれも「正当事由」が必要とされているので注意が必要です。

<解説>

賃貸することを目的として建てられた物件であっても、
老朽化による建て替え等を理由に、
賃貸借契約を貸主側から終了させたい時がありますよね。

そのように、
「貸主から賃貸借契約を終了させたい場合に、どのような方法があるか」
ということを今回は検討してみたいと思います。


1. 借主との合意による解約(合意解約・合意解除)

この点、賃貸借契約を終了させることについて
【借主の合意】が得られるのであれば、それが一番簡単確実です。

借主との間で合意解約書を締結することで、賃貸借契約は終了します。


当職の経験からすると、
だいたい1か月から2か月先に物件の明渡期限を設定し、
その間に借主に引越し先を見つけてもらう形が多いです。

また、物件を取り壊すのであれば、
原状回復義務は免除するケースが多いと思います。

このほか、当方の事情に合わせていただくということもあるので、
引越代(実費)をお支払いするケースが多いですね。


2. 借主の合意が得られない場合

では、賃貸借契約を終了させることについて
借主の合意が得られない場合はどうすればいいのか。

この場合は、賃貸借契約において
【契約期間の定めがある場合】と【契約期間の定めがない場合】で
取り扱いが異なります。


まず、賃貸借契約において契約期間の定めが「ある」場合ですが、
この場合貸主は契約期間満了日の1年前から6か月前までの間に
【更新拒絶通知】を借主に出すことが必要です。
(借地借家法第26条1項)

これにより、契約期間満了日に賃貸借契約は終了することになります。


ただし、契約期間満了後に借主が建物の使用を継続しているときには、
これに対して貸主は遅滞なく異議を述べることが必要とされているので、
注意するようにしてください(借地借家法第26条2項)。


契約期間の定めがある場合
→契約期間満了日の1年前から6か月前までの間に【更新拒絶通知】を借主に出す。
→契約期間満了日に賃貸借契約は終了する。
(ただし、契約期間満了日以後に借主が建物の使用を継続している場合は、遅滞なく異議を述べることが必要。)


これに対し契約期間の定めが「ない」場合は、
貸主は【解約申入れ】を借主に出すことになります。
(更新拒絶通知と異なり、解約の申入れはいつでも出すことができます。)

そして、解約申入れから6ヶ月間が経過したときに
契約は終了することになります。
(借地借家法第27条1項)

ただし、契約期間の定めが「ある」場合と同じように、
こちらも解約申入れから6か月が経過した後も
借主が建物の使用を継続しているときには、
貸主はこれに対して遅滞なく異議を述べることが必要とされているので、
注意が必要です(借地借家法第27条2項)。


契約期間の定めがない場合
【解約の申入れ】を借主に出す(いつでも出すことができる。)。
→解約申入れから6ヶ月間経過したときに賃貸借契約は終了する。
(ただし、解約申入れから6ヶ月経過後も借主が建物の使用を継続している場合は、遅滞なく異議を述べることが必要。)


3. 正当事由

このように、賃貸借契約を終了させることについて
借主の合意が得られない場合は、
賃貸借契約において「契約期間の定めがある場合」と
「契約期間の定めがない場合」で取り扱いが異なります。

上記の通り、貸主は、
A)契約期間の定めがある場合は「更新拒絶通知」を所定の期間に出す必要があり、
B)契約期間の定めがない場合は「解約申入れ」を出す必要があります。

(また、借主が使用を継続する場合はそれぞれ遅滞なく異議を述べる必要があります。)


そうすると、借主の合意が得られない場合であっても、
「更新拒絶通知」または「解約申入れ」をきちんと出せば、
貸主側の都合である程度柔軟に賃貸借契約を終了させることができそうですよね。

実際、そのように考えておられる貸主の方は少なくありません。


しかし、事はそう簡単ではありません。
なぜなら、法律上、「更新拒絶通知」と「解約申入れ」は
いずれも【正当事由】が必要とされているからです。
(借地借家法第28条)


この【正当事由】が認められないと、貸主は賃貸借契約を終了させられません。


つまり、A)契約期間の定めがある場合は、
賃貸借契約が期間満了によって終了せず、
貸主が同意していなくても法律の定めにより自動的に更新されてしまいます。
(これを法定更新といいます。)

また、B)契約期間の定めがない場合も、
契約が引き続き存続するということになります。


そこで、更新拒絶通知を出すにしても、解約の申入れを行うにしても、
正当事由を備えることが絶対必要になるのですが、
この【正当事由】というものが実に曲者です。


正当事由の有無は、
①建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が
それぞれ当該建物の使用を必要とする事情のほか、
②建物の賃貸借に関するこれまでの経過
③建物の利用状況
④建物の現況
⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として立退料の支払いを
申し出た場合にはその申出
といった要素を総合的に考慮して判断されます。


<正当事由>
①建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)がそれぞれ当該建物の使用を必要とする事情
②建物の賃貸借に関するこれまでの経過
③建物の利用状況
④建物の現況
⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として立退料の支払いを申し出た場合にはその申出
を総合的に考慮して、更新の拒絶または解約の申入れに正当の事由があるかを決める。

このように細かく個別事情が検討されることになりますので、
(全く類型化できないというわけではありませんが)
ケースバイケースの判断となります。


したがって、弁護士でもなかなか判断が難しいことが多く、
最終的には裁判所の判断を仰ぐしかないケースが多いのですが、
少なくとも、

「単に賃貸人側の事情・都合だけでは正当事由は認められない」

ということは頭の片隅に留めておいていただければと思います。


4. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案

以上から、貸主から賃貸借契約を終了させる方法としては

●借主の合意を得る。
●借主の合意が得られない場合において、契約期間の定めがある賃貸借契約の場合は【更新拒絶通知】を出す。
●借主の合意が得られない場合において、契約期間の定めがない契約の場合は【解約の申入れ】を行う。

ということになります。

ただし、更新拒絶通知と解約の申し入れには
いずれも「正当事由」が必要とされているので、
単に更新拒絶通知や解約の申入れをしただけでは契約は終了しない
(正当事由がなければ契約は終了しない)
とされている点、くれぐれもご注意ください。

このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。


なお、今回の解説は、「契約期間の定めがある契約」については
【契約期間満了時】にどう契約を終了させるか
を検討しています。

「契約期間の定めがある契約」において
契約期間の【途中】で契約を終了させることができるか
については、

Q&A 『貸主はいつでも契約を解約できますか?』

に詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。

その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。) 



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上記回答はあくまで一般的なケースについて述べるものですので、個別具体的なケースでの結論・成果をお約束するものではありません。
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