法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

入居者が長期不在の場合に合鍵をつかって物件の中に入れますか?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

入居者の許可がなければ原則できません。住居侵入等の違法行為になる可能性が高いので、注意してください。できれば警察に安否確認をお願いしてください。

<解説>

○ 入居者の方と何ヶ月間も連絡が取れない。
○ 郵便受けに郵便物が溜まっている。
○ 居室の様子を見ても、どうも生活感がない。
○ 長期不在の可能性が高い。

このように、明らかに何ヶ月間も入居者が長期不在であると思われる場合に、
管理担当者の方や大家さんは合鍵を使って物件の中に入ることができるのでしょうか。

今回はこの問題点について考えてみたいと思います。


1. 原則として許されない

この問題は

Q&A 『入居者が居留守を使う場合は合鍵をつかって物件の中に入れますか?』

で解説したのと基本的に同じです。

まず、大原則として、いくら合鍵を持っていたとしても、
入居者の許可なく物件のなかに入る行為は基本的に許されません。

こういったいわゆる【実力行使】は我が国においては禁止されているからです。

要するに、

たとえ権利があったとしても、法律上の手続に則って実現してください。

というふうになっていて、法律上の手続を無視した個人の実力行使は
原則として認められない、というふうになっている
わけです。

したがって、たとえば

○ 部屋からガスのような異臭がする。このまま放っておくと危ない。
○ うめき声や助けを求める声が居室内から聞こえている。

というような差し迫った緊急事態でもない限り、合鍵を使って居室内に入る行為は
違法行為になると考えています。
 
 
2. 契約書に特約がある場合もダメなのか

では、たとえば

「長期不在の場合、安否確認のために貸主は合鍵を使って居室内に入ることができる。」

というような特約が契約書にある場合はどうでしょうか。
このような場合は、特約ありとして適法になるでしょうか。

結論からいうと、
たとえこういった特約がある場合であっても違法になる可能性が極めて高い
と私は考えています。
というのは、

こうした私人の実力行使を認める特約は無効とされるケースが多い

からです。

(なぜなら、こうした特約がもし有効になるのであれば、特約さえ結んでしまえば
あとは実力行使をやりたい放題できますよね。
それではなんのために法律が実力行使を禁じているのかわからなくなるからです。)

したがって、たとえ契約書において上記のような特約があったとしても、
合鍵を使って居室内に入る行為は違法になると思います。
 
 
3. 具体的にはどういったデメリットがあるのか

では、こうした行為は違法であるとして、具体的にはどういったデメリットが
あるのでしょうか。

これは、民事と刑事に分けて考えるとわかりやすくなります。

まず、刑事では住居侵入罪の対象になります。

また、万が一居室内の物がなくなっている場合は、窃盗罪の嫌疑をかけられる
おそれすらあります。

また、入居者から「居室内の家具が壊れてしまっている。」
「婚約指輪が盗まれた」などといわれた場合、

民事では損害賠償請求の対象になることもあります。

民事事件ならまだしも、刑事事件になってしまうともう本当に大変ですから、
やはりこういった行為は避けられたほうがいいと思います。
 
 
4. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案

長期不在の場合は、警察に安否確認をお願いすることが多いと思います。

長期間連絡が取れないというのは、実は長期不在ではなく、
「居室内でお亡くなりになっている」という可能性もあります。

そこで、適法に居室内を確認できる警察に、
中の様子の確認をお願いするというわけです。

そこでもしご本人が居室内でお亡くなりになっているのであれば、
相続人を探し、その相続人との間で契約を終了させることになることが多いと思います。

これに対し、単に長期不在の場合は、
その方との契約を今後どうするか、考えなければなりません。


この場合においては「家賃滞納がある場合」と「家賃滞納がない場合」とで
それぞれ取り扱いが異なります。

これらの点についてはそれぞれ以下のQ&Aで検討しておりますので、
ご関心がおありでしたらご一読ください。

Q&A 『入居者が長期不在の場合に契約を解除できますか?』
 
 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。) 



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上記回答はあくまで一般的なケースについて述べるものですので、個別具体的なケースでの結論・成果をお約束するものではありません。
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