法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

入居者が居留守を使う場合は合鍵をつかって物件の中に入れますか?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

入居者の許可がなければ原則できません。住居侵入等の違法行為になる可能性が高いので、注意してください。

<解説>

入居者が家賃を滞納している場合、実際に物件に足を運び、
入居者と話し合いをしようとされる管理担当者の方や大家さんは
少なくありません。

この場合に、

明らかに部屋の中に居るにもかかわらず、居留守を使われた。

ということもあると思います。

では、このように居留守を使われた場合、
管理担当者の方や大家さんは合鍵を使って物件の中に入ることができるのでしょうか。

今回はこの問題点について考えてみたいと思います。


1. 原則として許されない

まず、大原則として、いくら合鍵を持っていたとしても、
入居者の許可なく物件のなかに入る行為は基本的に許されません。

こういったいわゆる【実力行使】は我が国においては禁止されているからです。

このことは、

Q&A 『滞納者の部屋の鍵を勝手に変えて部屋から閉め出してもいいでしょうか?』

で詳しくご説明したとおりです。

要するに、

たとえ権利があったとしても、法律上の手続に則って実現してください。

というふうになっていて、法律上の手続を無視した個人の実力行使は
原則として認められない、というふうになっている
わけです。

したがって、たとえば

○ 部屋からガスのような異臭がする。このまま放っておくと危ない。
○ うめき声や助けを求める声が居室内から聞こえている。

というような差し迫った緊急事態でもない限り、入居者の許可なく
合鍵を使って居室内に入る行為は違法行為になると考えています。
 
 
2. 契約書に特約がある場合もダメなのか

では、たとえば

「借主が家賃を支払わない場合、貸主は合鍵を使って居室内に入ることができる。」

というような特約が契約書にある場合はどうでしょうか。
このような場合は、特約ありとして適法になるのでしょうか。

結論からいうと、
たとえこういった特約がある場合であっても違法になる可能性が極めて高い
と私は考えています。
というのは、

こうした私人の実力行使を認める特約は無効と判断されるケースが多い

からです。

(なぜなら、こうした特約がもし有効になるのであれば、特約さえ結んでしまえば
あとは実力行使をやりたい放題できますよね。
それではなんのために法律が実力行使を禁じているのかわからなくなるからです。)

したがって、たとえ契約書において上記のような特約があったとしても、
入居者の許可なく合鍵を使って居室内に入る行為は違法になると思います。
 
 
3. 具体的にはどういったデメリットがあるのか

では、こうした行為は違法であるとして、具体的にはどういったデメリットが
あるのでしょうか。

これは、民事と刑事に分けて考えるとわかりやすくなります。

まず、刑事では住居侵入罪の対象になります。

また、万が一居室内の物がなくなっている場合は、窃盗罪の嫌疑をかけられる
おそれすらあります。

また、入居者から「居室内の家具が壊れてしまっている。」
「婚約指輪が盗まれた」などといわれた場合、

民事では損害賠償請求の対象になることもあります。

民事事件ならまだしも、刑事事件になってしまうともう本当に大変ですから、
やはりこういった行為は避けられたほうがいいと思います。

 
4. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案

そうなると、結局居留守を使われてしまっている場合は

A 粘り強く話し合いを試みる
B どうしても話し合いができない場合は裁判しかない

ということになります。

「裁判は面倒であるし、時間がかかる」
というお気持ちをわからないというつもりはありません。

しかし、我が国では

○ 私人による実力行使は原則認めない。
○ 話し合いで解決しないトラブルの解決は最終的に裁判所で行う。

という形になっていて、このルールに違反すると刑事ないし民事の
責任を問われるようになっていますので、くれぐれもご注意いただければと
思います。

 
 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。) 



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