法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

契約終了後も建物を明け渡さない借主に対し家賃は取れますか?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

「家賃」は取ることができませんが、「賃料相当損害金」という名目のお金を取ることはできます。

<解説>

期間満了によって賃貸借契約が終了するとします。

そうすると、契約更新をしないのであれば、借主は、
契約終了日までに物件から退去し、物件を明け渡す必要がありますよね。

これは、契約期間途中における解約の場合も同じです。

「何月何日までに出て行きます。」

ということで契約を途中解約する場合は、
その日までに物件から退去し、物件を明け渡す必要があります。

しかし、契約期間が終了する日までに物件を明け渡さない
(明け渡せない)ケースも時々あります。

たとえば、

契約期間が満了しているのに、借主が物件を明け渡さない場合。

また、

「何月何日までに出て行きます。」と言ったにもかかわらず、
その日までに借主が物件を明け渡さない場合。

このほか、

家賃滞納等を理由に貸主が契約を解除したにもかかわらず、
契約解除日以降も借主が物件を明け渡さない場合。

このような場合、契約終了日以降、貸主は借主に対して家賃を取ることが
できるのでしょうか。

今回はこの点について考えてみたいと思います。
 
 
1. 「家賃」は取れない

この点、結論から申し上げると、貸主は

「家賃」という名目のお金を取ることはできない。

ということになります。

なぜなら、期間満了にせよ、途中解約にせよ、契約解除にせよ、
何らかの原因で契約はすでに終了しているからです。

したがって、少なくとも「家賃」という名目ではお金を取ることはできない、
ということになるのです。


2. 「賃料相当損害金」という名目のお金は取れる

では、「契約終了後も借主が建物を明け渡さない」場合に、
貸主は一切お金が取れないのかというと、そんなことはありません。

この場合は、

賃料相当損害金(使用損害金)

という名目のお金を取ることはできます。

これはどういうことかというと、

① 賃貸借契約が終了しているにもかかわらず、
② 引き続き物件を占有している場合、
③ その占有は法律上の根拠のない占有=【不法占拠】になります。

そうすると、不法占拠をされている貸主としては、借主に対する
損害賠償を請求できる、ということになります。

これが、【賃料相当損害金(使用損害金)】とされるものです。

そして、この賃料相当損害金は、通常【家賃相当額】
されています。

したがって、貸主は、借主による「不法占拠」が続く限り、

家賃相当額を日割りで借主に対して請求することができる

ということになります。

よって、たとえば借主の明渡が契約終了日からちょうど1ヶ月遅れた場合は、
ちょうど家賃1ヶ月分に相当する金額を、貸主は借主に請求できる、
ということになります。


3. 賃料相当損害金は特約で増額できるか

それではこの賃料相当損害金は【借主との間の特約】で増額することはできるでしょうか。

結論から申し上げると、多くの裁判例では

家賃の2倍相当額程度までであれば、特約にて増額することができる。

としています。

そうすると、たとえば借主の明渡が契約終了日からちょうど1ヶ月遅れた場合に、
この特約を結んでいれば、貸主は借主に対して、
ちょうど家賃の2ヶ月分に相当する金額を賃料相当損害金として請求できる、
ということになるわけです。

単純化していえば、この特約がある場合

契約終了日以降明渡まで【家賃の倍額】を取れるようになる

ということですね。

このように、この特約を設けることで、貸主は明渡に向けたより強い強制力を
持つことができるようになります。

そのため、多くの契約書では

本契約が終了したにもかかわらず、借主が本物件を貸主に明け渡さなかったときは、契約が終了した日の翌日から明渡完了日まで、借主は、貸主に対し、貸主に生じた実際の損害額に加え、賃料等の倍額に相当する賃料相当損害金を支払う。

というような定めが設けられています。


4. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案
 
以上をまとめると次の通りとなります。

○ 契約が終了した場合は、その日以降いわゆる「賃料」を取ることはできない。
○ ただし、家賃相当額の「賃料相当損害金」を取ることはできる。
○ そして、この「賃料相当損害金」の金額は、家賃等の2倍程度までであれば特約にて増額することが認められている。
 

そこで、契約書を作成される際は、
賃料相当損害金は家賃等の倍額を請求することができるように定めて
おかれることをおすすめします。

このように定めても、
契約終了日までにきちんと借主が物件を明け渡してくれさえすれば
特に大きな問題にはならないので、
借主に一方的に不利な約束ということにもなりません。
(だからこそ裁判所でも認められています。)
 
 
  
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。) 



------------------------
【ご注意】
上記回答はあくまで一般的なケースについて述べるものですので、個別具体的なケースでの結論・成果をお約束するものではありません。
ご心配な点等ございましたら法律相談をお申込みくださいますようお願いいたします。
法律相談の概要はこちらのページでご覧になれます。

【Disclaimer】
当事務所では、当ホームページで提供する情報についてできる限り正確性、有用性を保つよう努めておりますが、その正確性、有用性、完全性(瑕疵担保責任を含みます)を保証するものではなく、また、具体的な成果が出ることを保証するものでもありません。
したがって、このホームページにて提供する情報に基づいて行動された結果、お客様に何らかの損害(精神的苦痛その他の金銭的損失を含む一切の不利益)が発生したとしても、南青山法律事務所はいかなる責任も負いませんので、ご了承ください。

南青山法律事務所
私たちは、賃貸不動産の管理をお手伝いする法律事務所です。

  • TOP