法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

借主が破産した場合、契約を解除できるでしょうか?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

契約解除のためには、実際に家賃の滞納が発生する等の事情が必要だと考えます。

<解説>

賃貸借契約書を見ると、次のような記載をよく見かけます。

甲は、乙に次の各号に掲げる事由の一つが生じたときには、何らの通知・催告を要せず直ちに、本契約を解除し、または本契約の更新を拒絶することができる。
(中略)
・支払停止もしくは支払不能となり、または、破産手続開始、民事再生手続開始もしくは会社更生手続開始その他これらに類する手続開始の申立てがあったとき。

この条文は要するに、
 
①入居者が破産した場合は、
②何ら通知せずに直ちに
③契約を解除できる

という内容の条文です。

そうすると、この条文が契約書の中に盛り込まれていれば、文字通り、借主が支払停止に陥ったり、破産したりすれば、直ちに賃貸借契約を解除できるすることができるようにも思われますよね。

しかし、法律上はそうではありません。


1. 実際に家賃滞納等が必要

今回はいきなり回答から入りますが、現在は
 
契約解除のためには、実際に家賃の滞納が発生する等の事情が必要。
単に借主が支払停止に陥ったり、破産をしたというだけでは契約の解除はできない。

と考えられています。

この点、確かに、契約書には、

甲は、乙に次の各号に掲げる事由の一つが生じたときには、何らの通知・催告を要せず直ちに、本契約を解除し、または本契約の更新を拒絶することができる。
(中略)
・支払停止もしくは支払不能となり、または、破産手続開始、民事再生手続開始もしくは会社更生手続開始その他これらに類する手続開始の申立てがあったとき。

という記載があります。

そうである以上、文字通り、借主が支払停止に陥ったり、破産したりすれば、直ちに賃貸借契約を解除できるすることができるはず。
そうお考えになっても不思議ではありません。

また、現実に破産したのであれば、家賃を支払えなくなる可能性が極限まで高まるわけですから、契約解除が認められてもよさそうなものです。

しかし、基本的には、「借主が破産した」というだけでは、解除するには不十分だとされています。
 
 
じゃあ、契約を解除するためには何が必要なのか。
そのためには、繰り返しになりますが、
 
実際に家賃が払われなくなった
等の事情があることが必要だとされています。

つまり、こういうことです。

A 入居者が家賃を支払わない場合は契約解除可能。
 
B 入居者が破産をしたが、引き続き家賃を払っている場合は
解除が認められない。

  
この点、少し前までの民法には、

賃借人が破産宣告を受けたときは、賃貸人は契約の解約を申し入れることができる。

という趣旨の条文がありました(民法621条)。
したがって、この時代は、少なくとも【借主が破産宣告を受けたとき】は、貸主は契約を解約することができたんですね。

しかし、この条文は数年前の法改正で削除されています。
 
とすれば、「単に破産しただけでは契約を解除することは認めない。実際に家賃を滞納することが必要だ」という趣旨であると考えるのが自然です(そうでなければ削除しなくてもいいはずだからです。)。

また、「破産宣告を受けたが、家賃滞納はしていない」というケースで契約の解除を認めなかった裁判例もあります。

したがって、これらを合わせて考えると、たとえ契約書にそう書いてあるとしても、

契約解除のためには、実際に家賃の滞納が発生する等の事情が必要。
単に借主が支払停止に陥ったり、破産をしたというだけでは契約の解除はできない。

ということになります。
 
 
2. 補足

このようにご説明すると、「契約書にそう書いてあるのにどうしてそんな風に解釈するのか不思議でならない。」と思われる方も少なくないと思います。

ただ、賃貸借契約というのは、売買契約と違って、

【継続的な関係のもとでの契約】

です。

したがって、その継続性に着目し、契約の解除が制限される方向で法解釈がなされることは少なくありません。

そのため、仮に契約書にそう書いてあったとしても、法律解釈によって、
○ そう簡単には解除できない
○ 信頼関係が破壊された、と評価される事情が必要
という方向に判断が流れていくことが多い、というわけです。


3. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案

そこで、繰り返しになりますが、

契約解除のためには、実際に家賃の滞納が発生する等の事情が必要。
単に借主が支払停止に陥ったり、破産をしたというだけでは契約の解除はできない。

 
と考えておかれるとよいと思います。


なお、借主が破産した場合は、
破産管財人が賃貸借契約を解除するかどうかを選択する
ことになっています(破産法53条)。

そこで、賃貸人としては、まずは破産管財人に対し、
契約を解除するのか、それとも継続するのかを確認することになります。


 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
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