法律相談Q&A

お客様から寄せられたご質問

家賃等の遅延損害金はいくら請求することができますか?

南青山法律事務所からのご回答・ご提案

最大で年14.6%の割合まで請求することができます。

<解説>

借主が家賃や共益費を滞納した場合に
「滞納した家賃・共益費を支払うよう借主に請求できる」
ことは言うまでもありませんが、そのほかに

遅延損害金(遅延利息)

というものも貸主は借主に請求することができます。

この遅延損害金というものはいったいなんなのか、
そしてそれはどれくらいまで請求できるものなのか、
今回はこれらの点について考えてみたいと思います。
 
 
1. 遅延損害金(遅延利息)とは

「家賃等の支払が遅れる」ということは、
簡単にいうと「約束を破った」ということですね。

契約違反であり、(専門用語でいうと)債務不履行なわけです。

この「約束を破った」場合になんの制裁もないとすると、
誰も約束を守らなくなってしまうおそれがあります。

それではあまりに無秩序ですし、むちゃくちゃな世の中になってしまいます。

そこで法は、約束を破った人に対してはきちんと制裁を課しています。
それが、いわゆる【損害賠償責任】というものです。

したがって、家賃等の支払が遅れてしまった場合も、
借主は貸主に損害賠償をしなければなりません。

これが、遅延損害金の中身です。


2. 契約書に記載がない場合も、遅延損害金を支払う必要があるか

では、この遅延損害金ですが、【契約書にその旨の記載がない】場合であっても
支払う必要があるのでしょうか?

結論からいうと、支払う必要があるということになります。
なぜなら、法律にそう定められているからです。

したがって、「契約書に何も記載がないから、遅延損害金なんて払う必要がない。」
というのは誤りです。

契約書に記載があろうがなかろうが、遅延損害金を支払う必要があります。


3. 遅延損害金はいくらになるのか

では、家賃滞納等の場合に遅延損害金を貸主は借主に請求できるとして、
貸主は借主に対していくら請求できるのでしょうか。

まず

契約書に遅延損害金の記載がない場合

について考えます。

この場合、法律(民法)には、

年5%の割合の遅延損害金を請求できる

と定められています。

したがって、この場合、家賃等の支払が遅れると、借主は、
遅れている家賃等の支払だけでなく、遅れた日数分だけ年5%の割合による
遅延損害金を余計に支払わなければならなくなる
、ということになります。
 
 
4. 貸主が事業として賃貸業に取り組んでいる場合

前記の通り、契約書に特になにも定められていない場合、
この遅延損害金は通常年5%ということになります。

ただ、この場合において、複数物件を賃貸しているなど
貸主が【事業として不動産賃貸業に取り組んでいる】場合、
この割合は増加します。

この場合は、

年6%の割合の遅延損害金を請求できる

ということになります。

つまり、貸主が借主に対して請求できる遅延損害金の額は、
貸主が事業として賃貸業を行っているか、
それとも(転勤中の自宅を借家に出すなど)単発的に所有物件を賃貸に出したのか、
で異なります。

したがって、契約書に遅延損害金の定めがない場合、

貸主が事業として賃貸業を行っている場合は年6%の割合
そうでない場合は年5%の割合

の遅延損害金を請求できる、ということになります。
 
 
4. 契約書に別の記載がある場合はどうなるのか

では、

契約書に具体的に遅延損害金の約束が記載されている場合

はどうなるのかというと、その場合は

契約書に記載された金額

を基本的に貸主は借主に請求できます。

したがって、たとえば契約書において
「遅延損害金は年10%とする」と定められている場合、
貸主は借主に対して年10%の割合による遅延損害金を請求することが
できます。
 
 
5. 遅延損害金の特約に上限はあるのか

このように、貸主は、借主との間で特約で定めることにより、
年5%ないし年6%という【法律の定める割合】を超える遅延損害金を
請求することもできます。

ではこの場合、最大いくらまで定めることができるのかというと、

個人相手に居住目的等で物件を貸す場合は最大で年14.6%の割合まで

となります。

なぜなら、消費者契約法がそう定めているからです。
(ちなみに、年14.6%以上の割合を定めた場合は、強制的に年14.6%の割合に
なります。つまり、14.6%を超える部分は法律上無効です。)

これに対し、

○ たとえ個人相手であっても、事業用として物件を貸す場合
○ 法人に対して物件を貸す場合

であれば、年14.6%を超える割合の遅延損害金を定めることも可能です。

ただ、あまりに高すぎる割合であれば無効になる可能性が出てくるのでご注意ください。

(ちなみに、年18.25%の割合による遅延損害金であれば裁判で認められたことがあります。)
 
 
6. 南青山法律事務所からのご回答・ご提案

そうすると、貸主としては、契約書にきちんと定めさえすれば、
少なくとも年14.6%の割合による
遅延損害金を借主に対して請求することも可能なわけです。

したがって、

契約書をきちんと整備し、家賃滞納等万が一の際には少なくとも年14.6%の割合による遅延損害金を請求できるようにしておく。

ということが賃貸管理上必要だと考えます。

  
 
このQ&Aが少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。
 
その他のQ&Aについてはこちらをご覧下さい。) 



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